私が小学生の頃、興味を持ったのが野球と写真だった。野球の練習帰りに、写真屋さんのショーウインドウの前で、何時間もカメラを眺めていた。1966年に発売された「ヤシカエレクトロ35」が、最初に所有したカメラだった。『ロウソク1本の光でも美しいカラー写真が撮れる』ことが、うたい文句だった。青春から野球は去り、カメラが青春のすべてになった。そしてカメラと「一生一緒に」生きることを、すでに意識していた。大学時代は一眼レフでないと撮影できない課題が多く、エレクトロ35を手にする機会も少なくなっていたが、ある日セルフポートレートという課題が出された際に、久しぶりにこのカメラで撮影することにした。自身と部屋をデコレーションし、三脚にカメラを設置し長めのエアレリーズを足元に這わせた。肉眼で見ている世界に近い感覚で簡潔に撮影したいという気持ちがこのカメラを選択させたのだ。ちょっときつい目。こけた頬…。ちょっとえますが、夢を追いかけることを決めた頃の自分が、ここにいます。ロウソクの1本の光から始まったような、カメラマン人生ですが、その光は途絶えることなく続いてきた。これからも灯し続けていきます。